マングースと言えば「VS ハブ」。ハブやコブラの天敵として有名ですね。
特に私ぐらいの年齢の人は、川口浩探検隊の「水曜スペシャル」を思い出すのではないでしょうか?
そのマングースが鹿児島県奄美諸島で駆除が進んで、ほぼ根絶間近になっています。
「マングースって、ハブをやっつける良い動物じゃないの?」
そうした疑問に対する答えなど、ここではマングースに関する情報をまとめていきます。
マングースとは何?
マングースとは、インド原産の食肉目の動物です。
ジャコウネコ科の雑食獣で、ネズミや鳥、昆虫などを食べます。
見た目はこんな感じ。
パット見は、かわいらしい印象。猫というよりはイタチに近い感じでしょうか?
ただ可愛い見た目に反して、鳥、小さい哺乳類、植物、昆虫なんでも食べてしまう外来種なのです。
マングースはハブの天敵としてハブ退治のために輸入された
元々は日本にいなかったマングースが、日本に外来種として入ってきた理由は何でしょうか?
それは沖縄の「ハブ」を退治するためです。
マングースがインドから沖縄に、初めて輸入されたのが1910年。21匹のマングースが沖縄本島に持ち込まれました。
理由は沖縄に生息している、猛毒を持つハブ退治のためです。当時はハブの毒を消す血清もなかったので、ハブにかまれると多くの人は命を落としていたのです。
ちなみにマングースを取り入れて、ハブと戦わせる提案をしたのは、動物学の権威である東大の教授でした。
マングースは動きがすばやく、コブラなどの毒蛇の攻撃をかわして頭にかみつき、仕留める習性があると知られていたからです。
マングースを連れてくれば、コブラと同じようにハブにも勝つだろう。その仮説を確かめる、実験も行われました。その結果、沖縄にマングースを放ってハブを退治する計画が実行されたのです。
さらにその後(だいぶ経っていますが)1979年には、沖縄以上に被害が深刻だった奄美大島にも、30頭ほどのマングースが放たれます。奄美にはハブが10万匹以上生息していたのです。
こうしてマングースは「ハブを倒す救世主」として、沖縄と奄美大島に取り入れられていったのです。
マングースはハブを退治しない役立たずだった!?
ところがですよ、80年代に入ると雲行きが怪しくなってきました。
マングースはハブ退治の役に立っていない!
ということが、明らかになってきたのです。
研究者たちがマングースの胃の内容物や糞を分析すると、ハブをほとんど食べていないのがわかりました。
では何を食べていたのでしょうか?
沖縄に放たれたマングースは、天然記念物であるヤンバルクイナやオキナワキノボリトカゲ、奄美のマングースはアマミノクロウサギやケナガネズミ、アマミトゲネズミといった国が保護するような希少種を食べていたのです!
ここにきて(だいぶ時間がかかりましたが)、ハブを倒す救世主として連れてこられたマングースは「有害な外来生物」として、今度は自分が駆除される立場になったのです。
とはいえマングースに罪はなくて、こうなることを予測できなかった人間の責任と言えそうですね。
なんだか可哀そうです・・・
ちなみにマングースは、どうしてハブと戦わなかったのでしょうか?
実はマングースは昼間しか行動しない昼行性の動物。対してハブは夜しか動かない夜行性の動物。
両者が野外で出会うことは、ほとんどなかったのです。
マングースは雑食性の動物です。なのでわざわざ毒を持っているハブを無理して仕留めなくても、その辺をノソノソあるいている、小動物や鳥などを捕まえる方が楽に決まっています。
ショーや実験で、無理やりハブやコブラと戦わされていたマングース。でも本当は、イヤイヤ戦っていたのかもしれませんね。
駆除される立場に落ちたマングース
ハブも退治しない、役に立たないマングースは数ばかりどんどん増えていきました。
特に奄美大島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれていて、閉鎖された空間に古代からの珍しい動物が多く生息していました。その生態系の頂点に立っていたのは「ハブ」だったのです。ハブの天敵である「マングース」は、ハブだけでなく、多くの希少動物にとっても脅威になったのです。
そうしてマングースは「有害外来生物」に指定されて、今度は駆除される立場に落ちてしまいます。
奄美大島に最初導入された30匹ほどのマングースは、今や2万匹以上が捕獲・駆除されるほどになっていました。
捕獲方法は「マングース・バスターズ」という専門集団が組織されて、森林内に罠を仕掛けるなどの地道な作業です。
そうして最近ようやく、沖縄本島でも奄美大島でも、ほぼマングースは根絶状態になってきています。
ここまで駆除するのに年間に3億円が費やされたとか。
希少生物が激減するなど、たった1種類の外来種が生態系を破壊してしまうのは、とても恐ろしいことだと思います。
マングースと言えば水曜スペシャルの用心棒?
ちなみに我々の世代にとって「マングース」と言えば、「コブラに立ち向かう英雄」だったのではないでしょうか?
昔、川口浩探検隊で有名な「水曜スペシャル」という番組が放送されていました。
川口浩隊長を中心とした探検隊が、世界の様々な秘境や、危険な場所を冒険するのを、毎週楽しみに見ていた記憶があります。
その中の企画で「毒蛇がたくさんいる(と思われる?)洞窟」を探索する企画がありました。その時連れて行ったのが「マングース」です。用心棒みたいなものです。かっこいいですね!
その他にも1980年代ごろは、「マングースVSキングコブラ」みたいな番組が多かった記憶があります。
当時はマングースはコブラやハブに勇敢に立ち向かう動物として、高い人気がありました。可愛らしい外見とのギャップも魅力でした。
それが今年になって、「マングースは根絶目前」というニュースになっていることは、少し複雑な気分です。
もちろん農作物や家畜がマングースの被害にあっている方のことを考えると、駆除は必要なことですが、反省すべき点が多い問題ですね。
マングースはペットとして飼えないけどミーアキャットなら飼える!
今は「有害外来生物」に指定されたので、マングースは自由に飼うことはできません。
代わりにマングースの仲間と言われる「ミーアキャット」なら飼うことは可能です。
仲間だったのですね!そう言われてみれば、似てる・・・
ミーアキャットは体長25~35cmぐらい。
体重は1kgほど。
猫よりは小さめな中型動物です。
大型のペットショップや通販などで、相場は20~40万円ほど。
ただし飼育部屋の温度を25~28度に保ったり、犬猫病院のように見てもらえる動物病院が多くなかったり、気軽に飼うことは難しい動物です。
飼う前には良く調べてから決断しましょう。
寿命は10~15年ほど。けっこう長生きするのですね!
ということで、今回はマングースについて、いろいろと紹介していきました。人間として様々な教訓が得られるので、理解しておきたい問題だと感じました。